本日は、判例をご紹介します。
東京地裁平成27年1月29日判決です。
【経緯】
賃貸借契約時、入居者の単身入居ということで契約。
※ペット飼育禁止物件
その際に、原状回復時の請求単価も合意。
入居後、入居者はオーナーに無断で自身の兄を
同居させ、さらに兄の飼育していた中型犬を
オーナーに無断で室内にて飼うことになった。
近隣住民からの苦情多発(鳴き声や糞尿の臭い)で、
無断同居禁止やペットは飼育禁止である旨
をオーナーから入居者へ伝えた後、
引っ越しを促した結果、入居者は引っ越すことに
なった。
引っ越しに伴い、
原状回復の見積もりをとった。
契約締結時に合意した単価に付随し、
損傷の激しいフローリングの全貼替、
また、早期違約に伴う違約金等も
オーナーから入居者へ請求したが、
入居者からの支払いは無く、
電話も出ないため、訴訟となった。
【判決趣旨】
・入居者は「早期違約金」の請求は不当と
主張するが、そもそも自分が契約違反を
したことに起因する早期違約なので、
不当と主張するのは間違い。
早期違約金は支払わなければならない。
・入居者は「フローリングの全貼替」は不当と
主張するが、オーナーは経年劣化等考慮した請求
をしており、かつ爪痕等が激しく全貼替が必須
と認められるため、全貼替は相当である。
【感想】
オーナーからすると、
無断で同居され、かつペットまで飼育される
というのは災難です。
しかし、このような事例は水面下でたくさん
あります。
これまでの判例では、
補修費用や部分貼替を認めた判例は
あったのですが、全貼替は特段の事情が
ない限り認められていなかったようです。
今回の事例では、
中型犬という貸室内で飼育するのに不適切な
種類の犬を飼育することや糞尿で、床の著しい損傷が
生じたことによって全貼替を認めたようです。
オーナーも、
経年劣化を考慮した金額を請求するなど、譲歩を
されているという部分もポイントだと思います。
この判例から言えることは、
ペットを飼育した場合に、
損傷が著しい場合には全貼替が認められる場合が
あるということですね。
今回の事例では、
■ペット飼育禁止なのに、無断飼育したこと
■契約時に原状回復費用単価の合意をしていたこと
■オーナーの請求がフェアな内容だったこと
という部分が結果に影響していると思います。
原状回復は賃貸経営でトラブルが多いところです。
トラブル防止のために、
契約締結時からリスクヘッジすることが大切です。