今年、平成29年6月に公布された
改正民法。
※2020年を目途に施行予定。
改正されて一体何が変わるのでしょうか。
今回から数回にわたり、民法が改正される
ことで、実務的にはどのような変化がある
のかを記載させて頂きます。
皆さまと、情報共有できればと思います。
例えば賃貸物件の給湯器が壊れて
お湯が出なくなったとしましょう。
これは誰が修理するべきものでしょうか。
これは貸主が修理すべきものです。
貸主は賃料を賃借人から得て、物件を貸しているので、
物件を当たり前に使用出来るよう維持する義務を
負っています。
上記内容については、現行民法の第606条第1項
にてこのように定められています。
第六百六条 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をす る義務を負う。
ただ、上記設例の給湯器ですが、賃借人が壊して
しまった場合はどうなるのでしょうか。
この場合は、ご想像の通り、賃借人が修理しなければ
いけません。
人(貸主)の物を壊しているわけですから。
これは既に皆さまご承知の通りの内容かもしれません。
しかし、現行民法には明記がありませんでした。
そこで先述の第606条第1項はこのように改正されることに
なります。
第六百六条 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をす る義務を負う。
ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によって その修繕が必 要となったときは、この限りでない。
「ただし」の後からの内容が改正点ですね。
賃借人の皆さん、
賃貸物件の設備などを壊したら、修理しなければ
いけませんので、大切に使用してください。
※そんなときのために、賃借人が入居時に加入する
家財保険には「借家人賠償特約」「個人賠償特約」が
付されているか確認してくださいね。
給湯器を貸主が修理するべきということは
ご理解いただけたと思いますが、では貸主が
迅速に対応してくれなかったらどうでしょう。
借主はお風呂に入れません。
これでは困りますよね。
そこで改正民法では、
「賃借人による修繕」という内容の条文を新設しました。
第六百七条の二 賃借物の修繕が必要である場合において、次に 掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。
一 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸 人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内 に必要な修繕をしないとき。
二 急迫の事情があるとき。
賃借人の権利として、
1号2号の要件を満たす場合には、賃借人が修繕を
しても良いということが明文化されます。
※ちなみにですが、
賃借人が設例のような、自然に壊れた給湯器の
修繕を自ら行った場合には、「必要費」の支出
と考えられるので、貸主に対して、修繕費用の
返還を直ちに求めることができます。
以上、賃貸の現場における改正民法「賃借人の修繕権」
のお話でした。