不動産を取り扱っておりますと、
お客様からよくご質問を頂くテーマです。
「売買や賃貸で物件を仲介する場合、
どこまで事件事故について伝えるんですか?」
よくご質問頂きます。
賃貸現場の場合、巷では、
「事件事故があった物件は、1回人が入居すれば、
次の入居者に言わなくても良いんですよね?」
という話が蔓延しているようです。
事件事故のことを、不動産業界では【告知事項】と
呼んでいますが、実際、この告知事項の認識について、
先日も当社に宅建協会からアンケート用紙がきました。
まだまだルールが明確ではない話なのです。
それゆえ、契約を決めたいからと言って、
何も伝えない不動産会社がいることも事実です。
確かに告知事項のある物件は、
ネガティブなイメージがあり、
通常の物件と比較して成約に至りづらいです。
買いたい方、借りたい方は
事件事故がある物件なのか、
どのような内容なのか、
事件性が高いのか、
などを確認する必要があります。
売主様や貸主様は、
事件事故についてご存知のことは、
どんな些細なことでも仲介会社に伝えてください。
故意に伝えなかった場合、
ご本人が告知義務違反として、訴訟の対象となる
場合がありますのでご注意ください。
そして、
我々不動産会社の人間がすべき
告知事項の取り扱い方法とは
どのようなものでしょうか?
弊社を含め、多くの不動産会社では
確認した告知事項の事実を
全て買主様・借主様に伝えております。
実は、内容をお伝えすると、
「なんだ、そんなこと?全然気にしません!」
と言われるお客様も相当数いらっしゃいます。
それよりも、
不動産会社が知っているのに伝えなかった、
簡単に調べればわかることなのに調べなかった、
これはかなり問題があると思います。
これは仲介責任違反だと思っています。
どのような些細な事故であろうと、
お客様には伝えなければなりません。
調べるとはどういうことかというと、
例えば区分所有マンションの場合、
「管理組合の理事長等へヒヤリングする」
などです。
大切なのは、お客様に【事実】を伝えることです。
住む・住まない、買う・買わないを最終的に判断するのは
お客様です。
仲介会社は誇張や隠ぺいをすることなく、
ただ事実を伝える義務があります。
※勿論関係者の方への配慮は必要です。
売主様・買主様・貸主様・借主様
全ての当事者に影響するお話です。
思わぬ損害が生じませんよう、くれぐれも
信頼できる仲介会社に依頼するようにしてください。
賃貸の現場において保証人が設定されている
場合、賃借人に滞納があれば、貸主や
管理会社は保証人に請求します。
保証人からすると、青天の霹靂。
「え?いきなり?」
と思われるはずです。
そして、
「賃借人、本当に払ってないのかな?」
「そんな奴じゃないんだけどな・・・」
と思われるかもしれません。
そんな保証人のために、
改正民法ではこのように規定されます。
(主たる債務の履行状況に関する情報の提供義務)
第四百五十八条の二
保証人が主たる債務者の委託を受けて保証 をした場合において、保証人の請求があったときは、債権者は 、保証人 に対し、遅滞なく、主たる債務の元本及び主たる債務 に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全て のものについての不履行の有無並びにこれらの残額及びそのう ち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなけれ ばならない。
つまり、
保証人が貸主や管理会社に、
滞納状況等の照会を行った場合には、
貸主や管理会社は応じなければならないという
ことです。
貸主や管理会社は、
明朗会計を行っているはずなので、
賃借人の滞納にまつわるすべての情報を
保証人に提示し、納得のうえで、
滞納回収するべきだと思います。
※あくまで保証人に滞納請求する場合。
以上、
債権者の情報提供義務についての記事でした。
ナニワ金融道のようなタイトルですが、
賃貸の現場では、言い方こそ違うものの、
保証人に対する請求は実行されています。
賃貸物件を借りる場合、
多くのケースで「保証人(または連帯保証人)」を
設定してもらいます。
賃借人は、契約時に保証人を準備する必要があり、
そのうえで賃貸借契約を締結します。
保証人を設定する理由は、
賃借人が賃料滞納した場合などに
代わりに弁済してもらうためです。
※実際の現場では、保証人の代わり
(もしくは保証人と合わせて)に、
保証会社による保証というものがありますが、
今回はあくまで個人にまつわる改正なので、
割愛します。
これまでの賃貸現場では、
賃借人の賃料滞納を長期間放置しておいて、
いきなり保証人に全額請求するといった
お話でトラブルになるケースも珍しく
ありませんでした。
賃貸現場における保証人は、
賃借人を【根保証】している立場にあります。
賃借人の債務不履行を根保証するので、
滞納があれば賃借人と同じように請求される
立場にありました。
改正民法では、
このような条文になります。
(個人根保証契約の保証人の責任等)
第四百六十五条の二
一定の範囲に属する不特定の債務を主たる 債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって 保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約 」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違 約金、損害賠償その他その債務に従たる 全て のもの及びその保 証債務について約定された違約金又 は損害賠償の額について、 その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負 う。
2 個人根保証契約 は、前項に規定する極度額を定めなければ、 その効力を生じない。
3 第四百四十六条第二項及び第三項の規定は、 個人根保証契約 における第一項に規定する極度額の定めについて準用する。
ポイントは、
■個人の根保証についての話です
■極度額を定めなければ効力を生じません
■保証契約は書面でしなければ効力を生じません(現行民法に同じ)
です。
今までの賃貸現場では、
保証人の保証範囲として極度額は設定されていません
でした。
民法改正後は、
【保証人による保証極度額:〇〇〇〇円】
といった表記がされることになります。
保証人の思いもよらぬ
債務発生を防ぐ目的ですね。
最初に極度額が設定されていれば、
保証人になる際に
「最悪、〇〇〇〇円の支払いを覚悟しておけばいいか」
と検討できますし、
貸主や管理会社も
「〇〇〇〇円以上は保証がない。放置できないな。」
と判断し、怠慢な放置もできなくなります。
そして、タイトルのような内容の
請求は出来なくなります。
双方にとって良い改正だと思います。
以上、
個人根保証の責任範囲のお話でした。
例えば、皆さんが建物を借りている場合。
通常通り、貸主は管理しており、
皆さんも通常通り使用していたとして、
落雷によって建物が一部滅失してしまったと
しましょう。
この場合、現行民法では次のような定めがあります。
第六百十一条
賃借物の一部が 賃借人の過失によらないで 滅失し たときは、賃借人は 、その滅失した部分の割合に応じて、賃料 の減額を請求することができる。
2 前項 の 場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解 除をすることができる。
つまり、賃借人の落ち度無く、
借りている物の一部が滅失した場合には、
賃借人は賃料減額請求をすることが【できる】
と規定されています。
※あくまでcanです。
そして、残りの部分では目的達成出来ない場合には
契約を解除することもできます。
今回、この民法第611条も改正対象になっています。
改正版はコチラ。
第六百十一条
賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び 収益をするこ とができなくなった場合において、それが賃借人 の責めに帰することができない事由によるものであるときは、 賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の 割合に応じて、減額される。
2 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった 場合において、残存する部分のみでは賃 借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人 は、契約の解除をすることができる。
下線部をご覧ください。
まずは、滅失以外にも「その他の事由」が
追加されています。
※借主有利ですね。
そして、
【減額される】という文言に変更されます。
改正前では、
「賃料 の減額を請求することができる。」でした。
つまり、いちいち賃料減額請求して承諾されないと
減額されないのではなく、法律上当然に減額される
という内容に変更されるのです。
これは民法の賃貸借の話です。
つまりは、私人間全ての賃貸借に適用されるということです。
※特別法ある場合は特別法優先ですが。
以上、
使用収益不能時の当然減額について記載いたしました。
実務的には当然のように【敷金】を取り扱って
いますが、実は【敷金】について現行民法には
明記がありませんでした。
我々は判例の考え方(判例法理)に則って
行動していたのです。
今回の改正民法では
第622の2で敷金について明文化されます。
第六百二十二条の二
賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを 問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃 貸人に対する金銭の 給付を目的とする 債務を担保する目的で、 賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。 以下この条において同 じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃 借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生 じた賃借人の賃貸人に対する金銭 の給付を目的とする 債務の額 を控除した残額を返還しなければならない。
一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
二 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
2 賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の 給付を目 的とする 債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対 し、敷金を その債務の弁済に充てることを請求することができ ない。
最初の下線部にあるように、
敷金の定義が明文化されます。
2つ目の下線部は、
以前の記事ににも記載しましたように、
賃借人側から賃貸人へ
「滞納賃料を敷金から支払っといて」
と請求することはできない旨規定しています。
実務のこれまでと、
何ら取り扱いに変更はなさそうです。
敷金の歴史(起源)ですが、
一説では
江戸時代に結婚する花嫁の家族が花嫁にお金を持たせたことに
由来するそうです。
離婚時には基本夫側から全額返金していたそうで、いまの敷金と
同じような内容だったそうです。
以上、改正民法における
「敷金の明文化」
のお知らせでした。